電子署名とタイムスタンプの違いとは?それぞれの仕組みと役割

電子署名やタイムスタンプを導入する企業が増加しています。
今現在、導入を検討している企業経営者や担当者の方もいるかもしれませんが、そもそもこの2つにはどのような違いがあるのか、ご存じでしょうか。
違いやそれぞれの役割を詳しく見ていきましょう。

電子署名とタイムスタンプの違いと関係性

万年筆を持つ人

電子署名とタイムスタンプを、混同している方は少なくありません。
どちらも、電子文書に信頼性を持たせるための仕組みですが、さまざまな部分に違いがあります。
それぞれの違いと関係性を見ていきましょう。

電子署名は「いつ(日付)」の証明ができない

電子署名を簡単に説明すると、電子文書の作成者や内容を証明するための仕組みです。
本人が作成したもので、内容が改ざんされていないことを証明できますが、いつ作られたものなのかを証明できません。

そのため、契約書の日付を改ざんされるリスクが考えられるのです。
契約の内容によっては、いつ契約を交わしたかの日時が非常に重要となるケースがあります。
電子署名だけでは契約日時を証明できないため、不利益を被るおそれがあります。

電子署名+タイムスタンプで強固な完全性を実現

電子署名では、誰が何を作成したかを証明できますが、それがいつ作られたものなのかは証明できません。
一方のタイムスタンプは、その電子書類がいつ作成されたのかを証明できます。

つまり、電子署名とタイムスタンプを組み合わせることにより、電子契約における完全性確保が可能となるのです。
電子署名だけではカバーできない領域を、タイムスタンプがフォローすることにより、誰がいつ何を作成しかたを明確にできます。

タイムスタンプがあれば長期署名が可能になる

電子契約により作成する書類の多くは、長期間の保存が求められます。
電子署名は最長で5年までの有効期限しかないため、ビジネスの現場では対応できません。
しかし、タイムスタンプを併用すれば、長期署名が可能となるのです。

すでに電子署名とタイムスタンプを発行した電子文書へ、保管タイムスタンプを施す手法があります。
この技術を用いれば、電子証明書の有効期限が過ぎたあとでも文書の完全性を証明できます。

電子署名とタイムスタンプの効果・仕組みに関する詳細

電子署名やタイムスタンプの技術を導入する予定があるのなら、効果や仕組みについて詳しく理解しておく必要があります。
それぞれの効果や仕組みをきちんと理解したうえで、導入を検討しましょう。

電子署名の役割と仕組み

電子署名の役割

電子文書はオフィスのペーパーレス化を可能としますが、どうしても内容改ざんのリスクがつきまといます。
内容が改ざんされると、信用失墜や経済的な打撃を受ける恐れがあります。
こうしたリスクを回避するため、電子署名が活用されているのです。

電子署名の効果・必要性

誰が作成した電子文書なのかを証明する技術が電子署名です。
電子文書は、オフィスのペーパーレス化を実現でき、業務効率の向上効果も見込めます。
一方で、知識のある者なら容易に内容の改ざんができるため、セキュリティ面に不安が残るのです。

電子署名を導入すれば、本人証明と非改ざん証明が可能です。
誰が作成したのか、内容の改ざんが行われていないのかを証明できるため、セキュリティ面に関するリスクを軽減できます。

仮に重要な電子文書の内容が改ざんされた場合、企業が直面するリスクは多々考えられます。
安全に保管すべき文書が改ざんされたことにより法的な責任を負い、取引先や顧客の信頼も失いかねません。

電子署名の仕組み

電子署名を行うには、電子証明書を発行している第三者機関へ申請を行います。
依頼を受けた認証局は電子証明書を発行し、依頼者に付与します。
電子証明書を取得した者は、電子文書に電子署名を施し、暗号化されたハッシュ値とともに相手へ送ります。

受け取った側は、認証局に対し電子証明書の有効性を確認しなくてはなりません。
また、それと併せてハッシュ値が一致するかどうかをチェックすることにより、電子文書に手が加えられていないことを確認できるのです。

タイムスタンプの役割と仕組み

タイムスタンプ の仕組み

タイムスタンプと電子署名の違いについては、先にお伝えした通りです。
電子署名がカバーしきれない領域をフォローし、電子文書の完全性をより高める技術がタイムスタンプです。
効果や必要性、仕組みを詳しく見ていきましょう。

タイムスタンプの効果・必要性

電子署名は、誰が何を作成したかを証明できる技術です。
契約の日時なども記録できますが、あくまでこの日時は署名を行った端末の時刻です。
そのため、その気になれば誰でも日時の改ざんができてしまいます。

タイムスタンプは、「その時間にその文書がたしかに存在した」ことを示す技術です。
電子署名にタイムスタンプを組み合わせれば、いつ誰が何を作成したのかをすべて証明できるのです。
タイムスタンプだけでは、誰が文書を作成したのかを証明できませんが、双方の技術を融合させることで文書の真正性を担保できます。

タイムスタンプの仕組み

電子署名と同様に、タイムスタンプも第三者機関を利用して発行します。
利用者はまず電子文書のハッシュ値をとり、そのうえでタイムスタンプ局に申請を行わなければなりません。
タイムスタンプ局は、利用者から提出されたハッシュ値に時刻情報を付与し、タイムスタンプトークンを生成します。

タイムスタンプの検証を行うときは、電子文書とタイムスタンプそれぞれのハッシュ値を比較します。
このとき、ハッシュ値が一致しなければ、何者かが電子文書に手を加えていると判断できるのです。

なお、タイムスタンプの発行を行うタイムスタンプ局は複数存在するため、信頼のおけるところに申請しなくてはなりません。
タイムスタンプ局を選ぶときの基準としては、タイムビジネス信頼・安心認定制度の認定を受けている業者かどうかです。
e-文書法でも、この制度の認定を受けた業者によるタイムスタンプしか認められていません。

>e-文書法の対応に必要なタイムスタンプの取得方法

電子署名とタイムスタンプの違いのまとめ

電子署名とタイムスタンプは、どちらも第三者機関を介して証明を担保させる仕組みです。
ただ、それぞれがカバーできる領域が異なるため、電子文書の真正性を高めるには双方の技術を併用する必要があります。
今後、電子署名やタイムスタンプを導入するのなら、それぞれの違いを正しく理解し、そのうえで導入に向けた準備を進めましょう。