電子署名や電子サインといったワードを耳にしたことのある方は、多いのではないでしょうか。
どちらも同じような性質を持ちますが、さまざまな違いがあるのも事実です。
ここでは、電子署名と電子サインの違いについて詳しくお伝えします。
電子署名と電子サインの違い
電子署名と電子サインを、まったく同じものだと認識している方は少なくありません。
呼び方が違うだけだと考えている方もいるようですが、それは大きな間違いです。
電子サインは、デジタル文書に行う署名プロセスを指し、電子署名はその中に含まれるひとつの概念なのです。
電子署名とは?
電子文書に対し、何らかの具体的な方法を用いて署名を行うことです。
電子文書が改ざんされておらず、正式なものであることを証明するため、電子署名を行います。
電子署名は、第三者機関を介して行われるため、電子文書の信頼性を高められます。
厳密性の高い仕組みであり、近年では導入を検討する企業も増えてきました。
厳密性や確実性の高い仕組みではあるものの、第三者機関が関わるためどうしても手間はかかる傾向があります。
電子サインとは?
同意を示す電子プロセス全般を、電子サインと呼んでいます。
先ほどの電子署名も、電子サインの一種です。
さまざまな方法がありますが、メールアドレスや電話番号による本人認証がよく知られています。
また、タブレット端末の画面に写し出された契約書などに、タッチペンで署名を行うのも電子サインの一種です。
現在では、クレジットカード利用時やホテルのチェックイン時などに、電子サインのシステムが利用されています。
契約書への電子署名・電子サインに法的効力はある?
書類への署名捺印には法的効力があります。では、契約書への電子署名、電子サインではどうなのでしょうか。
似たような性質を持つため、どちらも法的に有効だと思われがちですが、実はそうでもないのです。
詳しく見ていきましょう。
電子署名の法的有効性
電子署名には法的な効力があります。
紙の契約書にサインしたときと同様、法的な効力を発揮するため、裁判になったとき証拠とできるのです。
法的効力が発生する根拠としては、電子署名法第三条に記載されている内容です。
詳しくは割愛しますが、電子署名が行われているときは、記録された情報について真正に成立したものとみなす、と記載されています。
こうした理由から、裁判での証拠にできますが、現在のところ電子署名の有効性について争われた事例がありません。
海外に比べて訴訟発生率が低く、電子署名もそこまで広がりを見せていないからだと考えられます。
手書き電子サインの法的有効性
タブレットやスマートフォンに手書きで署名するケースでは、法的効力が発生しません。
電子署名法における電子署名とは、デジタル署名方式を採用した署名を指します。
つまり、スマートフォンやタブレットにタッチペンでサインしても、電子署名としては認められないのです。
ただ、電子サインはすでに金融機関や自治体でも導入されています。
そのため、今後手書きの電子サインが法的効力を持つようになる可能性は否めません。
タブレットへの電子サインを法的な証拠として取り扱う動きも
大手金融機関の中には、電子サインのシステムを導入し運用しているところもあります。
法律の専門家とも意見交換を行い、今後法的な効力をもつ可能性があるとアドバイスされたとのことです。
今後、電子サインが法的な証拠になる日は遠くないのかもしれません。
電子署名・電子サインを導入するメリット
さまざまなメリットが考えられますが、業務の効率化やコストカット、省スペース化などが挙げられます。
電子サインや電子署名を導入するにあたり、具体的にどのようなメリットがあるのか把握しておきましょう。
印刷費用・印紙税等のコストカット
電子署名や電子サインを導入すれば、ペーパーレス化が可能です。
紙の契約書を印刷する必要がなくなるため、紙代やコピー代などのコストをカットできます。
また、契約書には印紙も貼らなくてはならないため、トータルで莫大な費用になるケースも珍しくありません。
こうした印紙代や郵送費用などもカットできます。
業務の効率化
紙の契約書を利用するケースでは、その都度取引先やクライアントのもとへ足を運ばねばなりません。
書類に不備があれば修正し、再び足を運ぶ必要があるため、手間も時間もかかります。
一方、電子サインや電子署名を導入すれば、こうした手間を省けます。
データを受け取った相手は、パソコンやスマホなどで内容を確認でき、担当者と会うことなく署名できるのです。
営業マンはもちろん、顧客も手間が省けるためイメージアップの効果も見込めます。
省スペース化
ペーパーレス化が実現すれば、保管場所が不要になるため省スペース化が可能です。
法律によって保管が義務付けられている書類はたくさんあるため、多くの企業が専用の保管庫を用意しています。
電子サインや電子署名を導入し、ペーパーレス化が実現すれば、今まで使っていたスペースを別のことに利用できます。
電子署名と電子サインの違いまとめ
電子署名と電子サインの大きな違いは、法的効力があるかどうかです。
前者は効力がありますが、後者にはありません。
ただ、大手銀行が導入し運用を行っているのも事実のため、今後は法的効力を持つ可能性はあります。
いずれにせよ、導入により企業が得られるメリットは多いため、検討する価値は十分あります。