電子署名に必要な電子証明書の取得方法

電子署名は、電子的な技術を用いて電子文書に署名をし、正当性を証明するものです。
近年のビジネスシーンでは、電子署名が付与された電子文書のやり取りが頻繁に行われています。
ここでは、電子署名に必要な電子証明書の基礎知識や、取得方法を解説します。

電子署名に必要な電子証明書とは?

印鑑

電子署名は、電子文書に対して行う捺印、サインのようなものです。
では、電子証明書とはいったいどのような性質を持つものなのでしょうか。
文書の電子化や、ビジネスシーンで電子文書を活用するには、電子証明書の役割や取得方法を理解しておかねばなりません。

電子証明書の役割

電子証明書の役割は、電子文書に付与された電子署名の正当性を証明することです。
電子署名は、電子化された印影データなどを用いて行いますが、このようなデータは一定の技術をもつ者なら簡単に偽造できてしまいます。

たとえば、A社が電子文書を作成したとしても、そこに付与されている電子署名が必ずしもA社のものとは限りません。
悪意をもつ何者かが印影データを偽造し、勝手に電子署名している可能性もあるのです。

こうしたリスクを回避するため、電子証明書が存在します。
電子証明書は、国から指定を受けた第三者機関でしか発行できません。
先ほどの話に戻れば、A社と直接的な関係性をもたない第三者機関が、電子署名の正当性を証明してくれるのです。

登記所(法務局)で取得が可能

電子証明書を発行してくれる機関はいくつかありますが、代表的なところとして法務局が挙げられます。
法人や不動産などの登記を行う機関であり、登記所と呼ばれることもあります。

法務局で電子証明書を発行してもらう場合、法人や個人事業主の所在地を管轄している登記所で申請をしなくてはなりません。
登記所から発行してもらった電子証明書を電子署名に使用することで、相手方は文書の作成者が誰なのか、改ざんが行われていないかなどを確認できます。

電子証明書の発行手数料

法務局に限らず、第三者機関に電子証明書の発行を依頼すると、費用が発生します。
法務局のケースでも同様で、電子証明書の有効証明期間によって発行手数料が大きく変わります。

電子証明書の証明期間は、3~27ヶ月までのあいだで任意に選択可能です。
以下に、いくつか証明期間と発行手数料をピックアップしてまとめました。

  • 3ヶ月/2,500円
  • 6ヶ月/4,300円
  • 9ヶ月/6,100円
  • 12ヶ月/7,900円
  • 15ヶ月/9,700円
  • 18ヶ月/11,500円
  • 21ヶ月/13,300円
  • 24ヶ月/15,100円
  • 27ヶ月/16,900円

詳しくは、法人や個人事業主の本拠を管轄する法務局に問い合わせてみましょう。
なお、電子証明書に記載されている商号や代表者の氏名、資格などが変更されたときは、有効期間内であっても証明書としての効力を失うおそれがあります。
このようなケースにおいても、手数料の払い戻しは行われないため注意が必要です。

ファイル形式で電子証明書を取得する流れ

幾何学模様

電子証明書の取得は、ファイル形式で行われることが一般的です。
そこで、ここではファイル形式による電子証明書の取得方法を、ステップごとに解説します。
特に難しいことはありませんが、スムーズに発行できるよう流れをしっかり把握しておきましょう。

0.専用ソフトウェアのインストール

まずは、ダウンロードに必要な専用ソフトをダウンロードしましょう。
法務省の公式ホームページへアクセスし、[商業登記電子認証ソフトのダウンロード]ページからダウンロードしてください。
なお、専用ソフトのダウンロードに費用は発生しません。

ダウンロード前に、動作環境を確認しておきましょう。
OSやブラウザによって、ソフトの利用ができないケースがあります。
OSはWindows 8.1(32bit,64bit日本語版)、Windows 10(32bit,64bit 日本語版)などが利用でき、ブラウザはWindows Internet Explorer 11に対応しています。
PDFソフト、Adobe Acrobat Reader DCでも利用可能です。

1.申請書の作成

専用ソフトを起動し、申請書を作成しましょう。
[鍵ペアファイル及び証明書発行申請ファイルの作成]をクリックし、専用フォームに必要事項を記入します。
必須と記載されている項目は、漏れなく入力してください。

必要事項の必須項目をすべて入力したら、[鍵ペアファイル及び証明書発行申請ファイル作成実行]をクリックします。
実行するとあとから修正できないため、実行前にしっかり確認しておきましょう。
実行すると、鍵ペアファイルと登記所に提出するファイル、申請書などが作成されます。

2.発行の申請

電子証明書の発行は、登記所の窓口、もしくは郵送で行います。
直接足を運ぶ場合は、申請書と登記所に提出するファイルを持参してください。
ファイルはあらかじめUSBメモリやCDなどのメディアへ保存しておきましょう。

なお、USBやCDなどのメディアには、提出するファイルのみを保存してください。
また、フォルダに格納せず、パスワード設定もしてはいけません。
法務局で読み込めなくなるため、注意しましょう。
申請書とファイルを登記所の窓口で提出すると、電子証明書発行確認票を発行してもらえます。
郵送で申請するのなら、切手を貼り付けした返信用封筒を同封しましょう。

3.電子証明書の取得

電子証明書の取得は、専用ソフトを用いて行います。
専用ソフトを起動し、トップページから[電子証明書取得]をクリックしてください。
ページが変わったら、[シリアル番号]と[鍵ペアファイル]、[鍵ペアファイルパスワード]などをフォームに入力します。
[電子証明書パスワード]も設定しましょう。

最後に、[実行]をクリックすれば手続きは完了です。
なお、初回通信時には[電子認証登記所との通信について]とのページが表示されるケースがあります。
リンク先ホームページと、[電子証明書のハッシュ値]と一致することを確認し、続行をクリックしてください。

ICカード形式で電子証明書を取得する手続き

ICカード

一般的に、電子証明書の発行はファイル形式で行われますが、一部の事業者はICカード形式でサービスを提供しています。
ここでは、法務省の公式ホームページで紹介されている企業の中から、ICカード形式の証明書を発行している企業における手続きの流れを解説します。

申込書・必要書類の郵送

法人認証カードサービス申込書や印鑑証明書のコピー、登記事項証明書のコピーなどを郵送します。
商号にアルファベットが含まれているケースで、証明書に反映したい場合は会社定款も添付しましょう。
ポストへ投函する前に、郵送先の住所が間違いないかどうかも確認してください。

書類の受け取り

申込書や必要書類が事業者に届いたら、確認後に電子証明書発行申請書、申請用光ディスク、法人認証カードサービス請求書などが送られてきます。
発行手数料はこの段階で振込をするか、カードを受け取ったあとで支払います。
送られてきた書類に不備がないか、きちんと確認しましょう。

法務省への電子証明書発行申請

所定の収入印紙を貼り付けした電子証明書発行申請書や、申請用光ディスク、印鑑カード、会社定款などを法務局に提出しましょう。
自社を管轄する法務局への提出が必要なことを、忘れないでください。
法務局の窓口で申請を行うと、電子証明書発行確認票が交付されます。

交付された書類の送付

電子証明書発行確認票をコピーし、サービス提供事業者へ送付しましょう。
郵送のほか、電子メールやFAXなどにも対応しています。
サービス提供事業者のもとで、電子証明書や秘密鍵がICカードに格納され、発送準備が進められます。

ICカードの受け取り

カードは、本人限定受取郵便で安全に送られてきます。
カードを受け取る際には本人確認が行われるため、パスポートや免許証など、公的な身分証明書を用意しておきましょう。

電子証明書の取得方法まとめ

電子署名と電子証明書はワンセットと考えて差し支えありません。
電子証明書のおかげで、電子署名の正当性を高められるのです。
電子文書でのやり取りや電子契約などをビジネスに導入しようと考えているのなら、ぜひここでご紹介した内容を参考に電子証明書を取得してください。