電子署名の有効性は?知っておきたい法的知識

請求書や契約書などの文書を電子化し、ビジネスに使用する企業が増えてきました。
ペーパーレス化に伴い、導入されているのが電子署名と呼ばれる技術です。
ここでは、電子署名の法的な有効性、法的効力を持つポイントなどについて解説します。

電子署名には法的有効性がある

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電子署名に法的有効性がなければ、安心してビジネスで使用できません。
電子署名は安全性の高い技術であり、法的な有効性もあるとされているため、そうした心配は無用です。

その根拠を詳しく見ていきましょう。

電子署名法から見る電子署名の有効性

電子署名に関するルールを定めたものが、電子署名法と呼ばれる法律です。
正しくは、「電子署名及び認証業務に関する法律」ですが、省略して電子署名法と呼ばれています。
電子署名に法的有効性があるとされるのは、電子署名法第三条が以下のように定められているからです。

第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

出典:電子署名及び認証業務に関する法律

つまり、電子化されたデータに対し適切な電子署名が行われている場合、法的な有効性があると定めているのです。

 

電子署名は民事訴訟法でも適用される

民事訴訟法は、民事に関する訴訟のルールを定めた法律ですが、228条4項には以下のように記載されています。

「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」

ここには、署名や押印があれば真正に成立すると記載されていますが、押印でなければNGとは定められていません。
つまり、誰かが偽造したものではない、間違いなく本人や代理人が署名したものであれば、その文書は真正に成立したものとみなされるのです。

 

また、民事訴訟法では電子データが準文書として扱われます。
通常の文書と同様に扱われるため、訴訟の際にも証拠として提出できるのです。

 

電子サインの有効性は明確ではない

電子サインとは、タブレット端末などに専用のペンで署名を行う技術です。
近年では、大手銀行や運送会社などで導入されており、少しずつ普及し始めました。
電子サインと電子署名を混同している方も多いですが、2つは似て非なるものであるため注意が必要です。

 

電子署名法が定めるところの電子署名は、公開鍵暗号方式を用いていることが大前提です。
タブレット端末に本人が手書きでサインしただけでは、法的有効性はないと考えられています。

 

署名に関する法的な解釈もさまざまです。
どのようなものを署名とみなすのか、法律で詳細に定められていないため、電子署名に関しても法的有効性は明確でないのです。

>電子署名と電子サインの違いとは?法的効力について解説

電子署名の「真正性」が法的効力を持つポイント

PCに打ち込む人

電子署名の有効性を語るうえで欠かせないポイントが、真正性です。しかし、そもそも電子署名の真正性とはいったい何なのでしょうか。電子署名における真正性の定義や、有効化に必要なポイントを押さえておきましょう。

 

電子署名の真正性とは

真正とは、真実で正しいこと、本物であることを意味します。
つまり、真正性の高い電子文書とは、偽物でない本物の文書を指します。
電子文書の真正性を高めるため、採用される技術が電子署名とも言えるのです。

 

たとえば、電子署名が誰でも簡単に偽造できるものなら、電子文書の真正性は担保できません。

契約書や請求書など、ビジネスで使用する重要な文書においても偽造が行われるおそれがあり、企業はさまざまなリスクを負います。

 

このようなことが起きないよう、電子署名には真正性が求められます。

誰も改ざんできないような手法で署名を行い、なおかつ本人が署名したことも示さなくてはなりません

そのために用いられる技術が、後述する電子証明書やタイムスタンプです。

 

電子署名の有効化に必要なこと

電子署名を有効なものとするには、電子証明書とタイムスタンプの2つが必要不可欠です。
どちらかひとつがあればよいのではなく、双方がそろって初めて真正性が担保された電子署名となるのです。
電子証明書とタイムスタンプ、それぞれの概要や特徴を把握しておきましょう。

 

電子証明書

署名した人が本人であることを証明するためのものです。
ビジネス文書の署名は、担当者や経営者など、裁量や決定権を持つ者が行います。
電子文書でも同様ですが、誰でも簡単に署名できてしまうようでは、偽造が横行してしまうおそれがあります。

 

たとえば、A氏の作成した電子文書に、B氏が勝手に署名してしまう、といった事態が起こりえてしまうのです。
しかも、電子証明書がなければ、B氏が勝手に署名した事実も証明できません。
そのまま本人が署名したものとみなされるおそれがあるのです。

 

こうした事態を避けるため、電子証明書が必要です。
電子証明書は第三者機関である認証局に、本人であることを確認してもらったうえで発行してもらいます。
これにより、電子署名が正当なものであり、偽造されたものではないことを証明できるのです。

 

タイムスタンプ

電子文書がいつ作成されたのかを証明するための技術が、タイムスタンプです。
電子文書への日付などは、その気になれば誰でも改ざんできてしまいます。
そのため、過去に作成された電子文書へ、勝手に電子署名されて使用されるといったことも考えられるのです。

 

タイムスタンプも、電子証明書と同様に第三者機関に発行してもらいます。
その時間、確実にその文書が存在していたことを証明できるため、電子文書の正当性や非改ざん性を証明できるのです。

 

契約が行われた事実や、改ざんされていないことを証明できるため、訴訟になった際にも証拠として提出できます。

>電子署名とタイムスタンプの違いとは?それぞれの仕組みと役割

 

電子署名の有効性について裁判で争われた事例はあるのか

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現時点においては、そのような裁判が行われた記録はありません。
文書の電子化が広がりを見せているとはいえ、全体で見ればまだまだ少数です。
今後、文書の電子化がさらに進み、多くの企業が電子署名を導入するようになれば、裁判で争われるケースも増えるのではないでしょうか。

 

もしかすると、裁判で争われたケースがあるのかもしれませんが、残念ながらそれはわかりません。
国内で行われる訴訟すべてが公になっているわけではないからです。

 

まとめ

文書の電子化や電子契約などに関し、法的有効性を不安視する方は少なくありません。
しかし、ここでお伝えしたように、電子署名には法的有効性が認められています。
安心して導入を検討してみてはいかがでしょうか。