ビジネスのIT化を進める企業は年々増加しています。
IT化に伴う文書の電子化や、電子署名を使用した電子契約を導入する企業も増えていますが、きちんとデメリットも理解できているでしょうか。
ここでは、電子署名や電子契約のデメリット、対応策などについて解説します。
電子署名で電子契約を結ぶデメリット
さまざまなメリットがある電子契約ですが、デメリットがあるのも事実です。
取引先に理解してもらう必要があり、社内整備もしなくてはなりません。
また、サイバー攻撃されるリスクがあることも覚えておく必要があります。
取引先の理解が必要
日本は古くからの印鑑文化が根強く残り、多くの企業も文書への署名捺印による契約手法を用いています。
近年では電子契約が広がりつつありますが、それでも全体で見るとまだまだ少数派といえるでしょう。
こうした事実から、たとえ自社が電子契約を導入しても、取引先が対応してくれないと活用できないおそれがあります。
これまでの契約フローが変化してしまうため、取引先によっては頑なに応じてくれないかもしれません。
取引先に理解してもらうには、電子契約のメリットを丁寧に説明することです。
また、電子契約で生じる可能性のあるデメリットについても説明し、問題が生じたときの対応についても説明しなくてはなりません。
時間がかかる作業かもしれませんが、本気で電子契約を推し進めたいのなら避けては通れない道です。
社内整備が必要
これまでと業務フローが大きく変化してしまうため、社内整備をきちんと行わなくてはなりません。
行き当たりばったりで導入してしまうと、現場が混乱してしまい業務効率が低下するおそれがあります。
今まで紙の契約書を使用していたケースでは、電子契約の導入により現場スタッフはイヤでもパソコンを操作しなくてはなりません。
業務フローが大きく変わることに対し、抵抗を感じてしまうスタッフも少なからずいるでしょう。
これに関しても、やはり経営者や担当者が丁寧に説明するしか対応策はありません。
社員の中には、どうして今まで通りの方法ではダメなのか、と感じる人もいるでしょう。
そのような社員たちに対し、なぜ電子契約を導入するのか、どのようなメリットがあるのかなどを、丁寧に説明し理解を求める必要があります。
何の前触れもなく導入を進めると、いたずらに現場の混乱を招きます。
そのため、導入が決定したのなら、あらかじめ社員に説明する時間を設け、余裕をもって業務フローを移行させなくてはなりません。
電子契約できない契約もある
すべての契約において電子契約が可能なわけではありません。
すべての契約を電子化できるのなら、業務の統一化を図りやすいのですが、それをできないことにデメリットを感じる経営者もいます。
具体的には、以下の契約が電子契約できません。
- 定期建物賃貸借契約
- 定期借地契約
- 投資信託契約の約款
- 訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引における書面交付義務
以前は、労働条件通知書の交付も電子化ができなかったのですが、法改正により可能となりました。
現時点では、これらに関しては電子契約ができません。
そのため、必ず紙の文書を用いて契約を行う必要があります。
ただ、逆に考えると、これら以外はすべて電子契約が可能なため、大幅なペーパーレス化や業務効率化が可能です。
あくまで現時点でのことであり、今後法改正が行われ、これらの契約も電子契約が可能になるかもしれません。
サイバー攻撃のリスクがある
サイバー攻撃のリスクは、企業の規模に関係なく起こりえます。
むしろ、規模の小さな企業ほど狙われやすいとも考えられるため、注意しなくてはなりません。
インターネットを利用している企業なら、外部から攻撃を受け、電子文書の盗難や改ざんなどが起きる可能性は十分あります。
サイバー攻撃を受けたことで、企業が窮地に立たされてしまう可能性も考えられます。
重要な電子文書を盗まれる、改ざんされるなどすると、企業としての信頼は地に墜ちてしまうでしょう。
取引先やクライアントからの信頼を失い、事業を継続できなくなるかもしれません。
また、作成した電子契約書のデータが破壊されてしまい、契約期日に間に合わなくなるおそれもあります。
本来得られるはずだった利益を損ね、資金繰りが悪化するといったおそれも考えられます。
そもそも電子署名・電子契約とは?
電子契約とは、オンライン上で契約を交わすことを指します。
オンラインにアップロードした契約書に、双方が合意のうえで電子署名を施し、サーバーに電子データを保管する契約スタイルです。
電子署名とは、電子文書の正当性や非改ざん性を証明するための技術です。
紙の契約書における、署名捺印と同じと考えて差し支えありません。
電子署名を行うには、第三者機関である認証局に電子証明書やタイムスタンプを発行してもらう必要があります。
電子証明書とタイムスタンプを発行することにより、文書の存在証明や非改ざん証明が可能になるのです。
なお、電子署名に必要な電子証明書の取得方法や、電子契約の詳細については下記のページで詳しく説明しています。
>電子署名によって結んだ契約書の法的効力・有効性について解説
電子署名で電子契約を結ぶときの問題点を解消する方法
電子署名や電子契約を導入するのなら、以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。
以下の3つのポイントを押さえておけば、電子契約の導入や運用に関する問題点、デメリットを解消できます。
知名度の高い電子契約サービスを選ぶ
知名度の高いサービスを利用すれば、電子契約導入に伴う取引先の不安を解消できます。
取引先の理解が得られないことには、電子契約を導入してもビジネスで活かせません。
取引先も知っているような、知名度の高いサービスを利用すれば、安心感を与えられ前向きに検討してもらえます。
まずは、インターネットで電子契約サービスの知名度や評判などをリサーチしましょう。
著名な企業が運営しているサービスも、知名度は高いためおすすめです。
電子契約サービスの中には、国土交通省や経済産業省などが認めているところもあります。
このようなサービスなら、取引先の理解も得られやすいでしょう。
セキュリティの信頼性が高いサービスを選ぶ
セキュリティの高いサービスを選べば、サイバー攻撃のリスクを軽減できます。
電子契約を導入すれば、どのような企業でも少なからずサイバー攻撃のリスクを負います。
自社のみでなく、取引先やクライアントにも損害を与えるおそれがありますが、セキュリティの信頼性が高いサービスを選べばそうした懸念が少なくなります。
具体的に、どのようなセキュリティ体制を整えているのか、事前にチェックしましょう。
通信の暗号化はもちろん、第三者によるセキュリティ診断なども行われているサービスなら、比較的安心です。
電子契約書と紙の契約書を使い分ける
いきなりすべてを電子契約へシフトしようとすると、社内整備が大変です。
業務フローが大幅に変わってしまい、現場も混乱してしまうでしょう。
そのため、電子契約する種別を限定し、少しずつ領域を広げていくのが基本です。
少しずつ適用の範囲を広げていけば、社員も業務に慣れます。
スムーズに電子契約へ移行でき、現場を混乱させることもありません。
まずは1~2種類の電子契約からスタートし、様子を見てみましょう。
電子署名で電子契約を結ぶメリットはデメリットを上回る
電子契約の導入や運用に関するデメリットはたしかにあるものの、それを上回るメリットがあるのも事実です。
すでに多くの企業が電子契約を推し進めているのも、メリットが多いからだと考えられます。
メリットとデメリットどちらも正しく理解し、そのうえで電子契約の導入を検討してみましょう。