e-文書法は、法令により保存が義務付けられた文書の電子保存を容認した法律です。
ここでは、スキャナ保存に対応している書類の一覧や、領収書を電子化するメリット、国税関係書類の電子化を成功させるポイントなどをご紹介します。
領収書はスキャナ保存が可能
もともと、領収書は電子保存が可能でしたが、電子帳簿保存法改正により現実的となりました。
現在では、スキャンして電子化した領収書データの保存も認められています。
詳しく見ていきましょう。
1998年から法的には可能だった
1988年に施行された電子帳簿保存法は、国税庁が管轄する法律です。
国税関連文書の電子化に関する、さまざまな規定を定めた法律で、正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」です。
国税関連文書の電子化は容認されたものの、当初領収書の電子保存に関する条件が厳しく、普及しなかった経緯があります。
当初は、システム上で作成されたデータのみを対象としており、領収書をスキャンして電子保存することは認められていなかったのです。
2015年以降の電子帳簿保存法改正により現実的に
改正前の電子帳簿保存法では、3万円以下の領収書しか電子保存が認められていませんでした。
また、金額以外にもさまざまな条件があったため、領収書の電子化へ積極的に取り組む企業は少なかったのです。
電子帳簿保存法は幾度にわたり規制緩和が行われ、2015年には電子化できる領収書の金額上限が撤廃されました。
これにより、領収書の電子化が現実的なものとなり、多くの企業が積極的に取り組み始めました。
スマホでスキャンした領収書も有効
電子帳簿保存法が改正されたことで、スマホやデジタルカメラで撮影したデータも認められるようになりました。
領収書だけでなく、レシートもスマホのカメラで撮影し、電子データとして保存が可能です。
電子帳簿保存法では、対象となる電子文書の可視性を確保しなければならないと規定しています。
かつてのスマホカメラは画素数も低く、可視性の確保に不安がありましたが、現在では高機能なカメラを搭載する機種が増えたため、規制緩和が進んだのです。
スキャナ保存に対応している書類一覧
スキャナ保存に対応している書類は、領収書だけではありません。
以下、スキャナ保存に対応している書類をまとめました。
【スキャナ保存が可能な書類】
- 注文書
- 請求書
- 見積書
- 契約書
- 領収書
- 納品書
いわゆる、取引関係書類が該当します。
では、逆にスキャナ保存が不可能な書類には、どのようなものがあるのでしょう。
【スキャナ保存ができない書類】
- 仕訳帳
- 売掛金元帳
- 買掛金元帳
- 固定資産台帳
- 売上帳
- 棚卸表
- 賃借対照表
- 損益計算書
ほかにもありますが、代表的なのはこれらの書類です。
ビジネス文書の電子化を導入するのなら、スキャナ保存できるものとできないもの、どちらも覚えておきましょう。
領収書を電子化するメリット
そもそも、領収書を電子化することにいったいどのようなメリットがあるのでしょうか。
さまざまなメリットが挙げられますが、代表的なものとしてコスト削減や長期保存が可能な点、経費精算の効率化などが挙げられます。
書類の保管コストが削減できる
紙媒体の書類を保管する場合、保管のためのコストが発生します。
商取引で発生する領収書ともなれば膨大な数となり、専用の保管スペースを確保しなくてはならないためです。
書類を電子化すれば、専用の保管庫が不要となりコストを削減できます。
また不要となるのは保管に必要なスペースだけではありません。
従来のように人の手で領収書の仕分けや管理を行う必要がなくなるため、人的コストも削減できます。
領収書の管理や保存業務を担当していた人材を、別の業務に割り当てられるようになるのも大きなメリットです。
長期保存が可能になる
商取引や国税関連の文書は、その多くを長期保存しなくてはなりません。
しかし、紙でできた領収書は年月とともに色あせや腐食などが発生し、コンディションを保ったまま長期間の保存が難しいのです。
一方、電子化すればこうしたデメリットは解消できます。
電子データとして保存できるため、色あせや虫食い、腐食などでコンディションを損なう心配がなくなります。
長期保存に伴うスペースの拡張やコストの拡大などを防げるのもメリットです。
消費税の複雑化に対応できる
日本国内では、消費税が幾度にもわたり引き上げられてきた経緯があります。
税率が変わるたびに経理担当者の手間が増え、作業を煩雑にしてきました。
また、2019年からは軽減税率も導入され、異なる税率の売掛や買掛などが混在するようにもなったのです。
さらに、2023年からは消費税のインボイス制度が導入されるため、経理担当者は領収書の処理をより確実に行わなければならなくなります。
紙の領収書を1枚1枚チェックするのは骨の折れる作業ですが、電子化したデータなら業務の負担を大幅に軽減できます。
経費精算の効率化が図れる
経費精算を行う際には、領収書のチェックに経費申請書類の作成、上司の承認を得たのちに再度確認、整理、ファイリングなど多くの業務が発生します。
領収書を電子化すれば、従来のこうした煩雑な業務を軽減できます。
これまでは、領収書を台紙に貼り付け経費申請書類を作成していましたが、電子化すればスキャナで取り込んだデータでスムーズに書類作成が可能です。
経費精算システムも導入すれば、より業務の効率化を進められるでしょう。
国税関連書類の電子化を成功させるポイントと注意点
国税関連書類の電子化を推し進めるにあたり、いくつか覚えておくべきポイントがあります。
ポイントを押さえておかないと、導入がスムーズにいかず、電子化によるメリットも得られないかもしれません。
大切なポイントと併せて注意点も覚えておきましょう。
e-文書法の要件への対応
e-文書法では、4つの基本要件が定められています。
これらの要件を満たさない電子書類は、認められないため注意が必要です。
e-文書法が定める4つの要件は以下の通りです。
- 可視性
- 完全性
- 機密性
- 検索性
可視性が求められる理由は、必要なときに明瞭で整然とした状態で書面作成できないと困るからです。
完全性は、内容の改変や消去、既存などの抑止措置を講じているかが求められます。
機密性に関しては、国税関連帳簿や書類には求められません。
検索性は、必要なときスムーズに対象の書類を検索できるかどうかです。
電子帳簿保存法の要件への対応
e-文書法だけでなく、電子帳簿保存法の要件も満たさなくてはなりません。
電子帳簿保存法では、5つの要件を満たすよう求めています。
- 訂正・削除履歴の確保
- 相互関連性の確保
- 関係書類などの添え付け
- 見読可能性の確保
- 検索機能の確保
訂正・削除履歴の確保は帳簿のみに適用されます。
データの訂正や削除などを行ったとき、履歴が残るシステムの採用が求められます。
相互関連性の確保も帳簿のみに適用され、ほかの関連書類に関連し、相互に確認ができるかどうかが求められるのです。
関係書類などの添え付けは、適切な規定で入力や保存ができているか、見読可能性の確保はデータを明瞭に出力できる環境を求めています。
検索機能の確保は、必要なときにデータをスムーズに探すシステムを備えているかどうかです。
自社の書類をタイプごとに分類する
スキャナ保存以外にも、効率化の方法はあります。
すべてをスキャナ保存しようと考えるのではなく、電子化する書類をタイプ別に分類し、トータルで効率化を図ることが重要です。
たとえば、見積書や請求書などはエクセルデータのまま保存が可能なため、わざわざデータを出力してスキャナ保存する必要はありません。
どのような形式での保存が認められているのかを文書ごとに把握し、より効率的な運用を図りましょう。
徐々に電子化の範囲を広げていくのがおすすめ
最初からすべてをe-文書法に対応しようとするのは困難です。
まずは限定的に電子化を進め、少しずつ範囲を拡大しましょう。
最初は経費や領収書などの電子化を進め、次に請求書や見積書などと、狭い範囲から少しずつ広くしていくのが成功への近道です。
e-文書法に対応し領収書の電子化を進めよう
領収書の電子化は法律で認められており、導入すれば保管コスト削減や長期保存が可能です。
消費税の複雑化へ対応でき、経費精算の効率化も図れるため、この機会に領収書の電子化を検討してみてはいかがでしょうか。