文書管理マニュアルの作り方・作成のポイントを解説

事業活動を行う法人や個人事業主は、日常的にたくさんの文書を扱います。
中には法令で長期の保存を義務付けられているものもあるため、文書管理マニュアルを作成し適切に管理しなくてはなりません。
ここでは、文書管理マニュアルの作り方、作成のポイントなどを解説します。

文書管理マニュアルの作成方法

文書管理マニュアルの作成方法

文書管理マニュアルと文書管理規定を混同している方が多いようですが、2つは異なる存在です。
文書管理に関する大まかな方針や大義を定めたものが文書管理規定で、文書管理マニュアルはより細かく具体的な管理方法を定めたものです。
具体的な作成の流れを見ていきましょう。

現状を把握し管理範囲を決める

文書管理マニュアルを作成するにあたり、まずすべきは現状の把握です。
現状でどのような書類を扱い、管理や保存をしているのかを把握しなくてはなりません。
紙文書の量を確認し、保管方法や保存状態などもチェックしてください。

電子文書を扱っているのなら、同様に現状を確認しましょう。
電子化した文書がきちんとフォルダ分けされているか、必要に応じて出力できる環境が整っているのかなどを確認します。
併せてアクセス権が適切に付与されているかもチェックしてください。

現状をきちんと把握すれば、自社における文書管理の課題点を浮き彫りにできます。
課題が明確になれば、改善のために必要な事項をマニュアルに盛り込めるのです。

必要な項目を決める

マニュアルに盛り込む具体的な項目を策定します。
企業によって文書管理マニュアルの項目は異なりますが、一般的には以下の項目を盛り込むケースが多く見受けられます。

  • 適用範囲
  • 文書の保管や編集
  • 廃棄
  • 罰則や改廃

適用範囲とは、マニュアルで定められたルールを適用する範囲です。
自社で扱うすべての文書に適用するのか、紙の書類だけなのか、電子文書だけなのかなど、具体的な適用範囲を定めましょう。

文書の保管や編集に関する項目も盛り込みます。
複製した書類の扱いやコピー時のルールなどを決めるのです。
ほかにも、編集や保管する期間、保存する場所などに関するルールも定めなくてはなりません。

廃棄の項目では、不要になった文書の廃棄方法を定めます。
文書を廃棄するタイミングや具体的な手順、注意すべきポイントなどをルール化しましょう。

罰則や改廃に関する項目では、ルール違反が発生したときのペナルティを盛り込みます。
あとでトラブルになりやすい部分のため、罰則やペナルティは明確にしておきましょう。
規定の改廃方法、手順なども盛り込んでください。

文書のライフサイクルに応じた運用ルールを策定する

文書のライフサイクルに応じた運用ルールを策定する

文書のライフサイクルとは、発生から廃棄までのプロセスです。
文書には、発生→伝達→保管→保存→廃棄のプロセスがあります。
文書管理マニュアルを作成するときは、このライフサイクルを念頭に置き、それぞれのプロセスごとにルールを決めねばなりません。

発生

手書きやパソコンソフトを使用しての文書作成や、郵送、メールなどで文書を受け取ったときが[発生]に該当します。
文書管理マニュアルには、扱うべき文書が発生したときのルールを盛り込む必要があります。

たとえば、紙文書のケースでは文体や書式、件名の付け方などのほか、綴じ方や受け取った際の注意事項などを決めるのです。
電子文書では、ファイル名の決め方やフォルダわけに関するルール、使用するソフトウェア、記録メディアへの秘密区分の表示方法などを決めます。

伝達

発生した文書を、すぐに保管するケースはあまり多くありません。
社内の人間で文書を共有する、外部に向けて発信するといったケースが発生します。

具体的には、文書の承認ルートを定めます。
外部へ発信する文書の場合、最終的な承認を誰がするのか、チェック機構はどうなるのかなどを決めるのです。
また、郵便やファックス、電子メールなどで送る際のルールも決めておかねばなりません。

発信手段に応じた注意事項も、文書管理マニュアルに盛り込みます。
電子メールのパスワード設定や署名への記載事項、送り状に記載することなども明確にしておきましょう。

保管

保管とは、一般的にオフィスや事業所で文書を管理することを指します。
使用頻度や緊急性の高い文書、常用文書などはオフィスで保管するケースがほとんどです。

文書管理マニュアルでは、具体的な保管のルールを定めます。
オフィスのどこに保管するのか、誰が管理を行うのか、どれくらいの期間保管するのかなどを決めるのです。

保存

使用頻度や緊急性の高くない文書は、保存のフェーズへ移ります
文書によっては、保管のフェーズを経ずに保存されるケースもあります。
保管から保存へ移行するタイミングは企業によって異なりますが、これについても文書管理マニュアルに記載されることが少なくありません。

保管からどれくらいの期間が経てば保存へ移行するのか、どこで保存するのかなどを規定します。
書類のまま管理するのか、それとも電子化して保存するのかなどを定めることもあります。

廃棄

不要になった文書は廃棄しないと、保存スペースに余裕がなくなります。
すべてを電子データ化する手もありますが、文書によっては書類のまま保存を求められるものもあるため、現実的とはいえません。
適切なサイクルで文書を廃棄しないと、どんどん溜まってしまうためルールをマニュアルに盛り込む必要があります

どれくらいのタイミングで廃棄をするのか、どういった方法で処分するのかなどを明確にします。
廃棄時に情報を漏洩、流出させないための方法や、注意点なども盛り込むのが一般的です。

社内に通知する

素晴らしい文書管理マニュアルを作成しても、社内の人間に周知できていなければ意味がありません。
現場で働く社員にきちんと周知させ、マニュアルに記載されたルールに則って文書管理を行うことが大切です。

完成した文書管理マニュアルの内容をきちんと伝達し、セキュリティポリシーも含めてルールを守るよう教育しなくてはなりません。
情報漏洩や流出を防ぐため、定期的な教育や研修を行うのもおすすめです。

文書管理マニュアル作成のポイント・注意点

文書管理マニュアル作成のポイント

文書管理マニュアルを作成するにあたっては、権限を明確に設定することが大切です。
また、内容の簡素化や省略化を目指し、紙文書と電子文書、双方のパターンで作成することも覚えておきましょう。

権限を明確に設定する

文書管理における権限を明確にしないと、現場の人間は誰が何をすればいいのか判断できません。
現場で混乱が起きてしまい、チェック体制にほころびが生じる、マニュアルが機能しないといったことも起こりかねません。
誰が何をすべきかを明確にし、そのうえで適切に権限を設定しましょう。

簡素化・省略可を目指す

あまりにも複雑すぎるルールをたくさん作りすぎてしまうと、その通りに文書管理ができず結局形骸化してしまうおそれがあります。
具体的なルール作りは必要なことですが、その中でなるべく簡潔化、省略化を目指しましょう。
現場の声もヒアリングしつつルールを策定するのも大切です。

紙文書用と電子文書用2パターン作成する

今はまだ紙文書のみしか扱っておらずとも、この先電子文書を扱う可能性があります。
取引先から電子文書を受け取ることも考えられるため、あらかじめ両方のマニュアルを用意しておきましょう。
そもそも、紙文書と電子文書は性質が異なるため、同じルールでは適切な管理ができません。

文書管理マニュアルの作り方まとめ

文書管理マニュアルの作成にあたり、まずはきちんと現状を把握し、必要な項目を決めたうえで管理、運用ルールを細かく定めていきましょう
権限の明確化や簡素化・省略化なども、マニュアル作成において重要なポイントです。