社内の書類ペーパーレス化で何が変わる?メリット・デメリットや進め方を解説!

企業が事業活動を行うにあたり必要な書類は数多く存在し、中には長期にわたる保管が必要な書類もあります。
近年ではペーパーレス化を進める企業が増えてきました。
本記事では、企業が書類のペーパーレス化を進めるべき理由や、生じるメリット・デメリットなどを解説します。
ペーパーレス化を検討している企業はぜひ参考にしてください。

既存書類のペーパーレス化の必要性

書類の山

ペーパーレス化にはデメリットもありますが、それを補って余りあるメリットがあります。
それゆえに、現在ではペーパーレス化を進める企業が増えているのです。
これからペーパーレス化を進めようと考えているのなら、どのようなメリットやデメリットがあるのかを理解しておく必要があります。

ペーパーレス化とは?

書類を紙ではなく、電子データとしてやり取りや保存することをペーパーレス化といいます。
従来は、ビジネスで必要となるさまざまな書類を紙で作成していました。
しかし、紙の書類は枚数が多くなるとかさばってしまい、保管するスペースが別途必要です。

また、保管状態がよくないと劣化してしまい、視認性が悪くなってしまうデメリットもあります。
このような問題を解決してくれるのが、ペーパーレス化です。

ペーパーレス化のメリット

コストや保存スペースの削減、情報共有がしやすい、セキュリティを強化できるなどさまざまなメリットがあります。
まずは、ペーパーレス化で得られる代表的なメリットを見ていきましょう。

①コストの削減

紙の書類は、プリントアウトしなければならないため紙のコストが発生します。
また、コピーやプリントアウトするには複合機やコピー機などが必要であり、インク代もかかります。

書類を電子化すれば、コピーやプリントアウトの必要がありません。
後述しますが、電子化したデータならオンラインで情報共有しやすくなるため、わざわざ人の手で配布する必要がなくなり、人的コストも下げられます。

②書類の保存スペース削減

電子化したデータなら、オフィスに保存スペースを別途用意する必要がありません。
パソコンのハードディスクやクラウドへ保存できるため、物理的なスペースを必要としないのです。

手間のかかるファイリングや管理作業をなくせるのもメリットといえるでしょう。
大量の書類を保存するスペースが不要となるため、オフィスの縮小化も実現できます。

>オフィス不要論は本当?オフィス縮小のメリット・デメリット、成功させるポイントを紹介

③在宅勤務にも◎情報確認・共有がラクに

電子化したデータは、メールに添付して送る、クラウド上で閲覧するといったことが可能です。
書類を手渡しする必要がなくなり、情報共有が容易になるのです。

在宅勤務の場合でも、オンラインで容易に情報共有ができ、わざわざ出社する必要がありません。
むしろ、テレワークやモバイルワークを導入するなら、ペーパーレス化も並行して進めるべきです。

>テレワーク導入にはペーパーレス化が必須!重要性とポイントを解説

⑥OCR化で検索が簡単に

書類をスキャンして電子化し、OCR処理を施すことによりデジタルの文字コードに変換できます。
これにより、コンピューターが文字を認識できるようになるため、簡単に必要な書類の検索ができるのです。

OCR化した電子データなら、特定のキーワードを入力して検索が可能です。
分厚いファイルから手当たり次第に探す手間がなくなり、業務効率の向上効果も期待できます。

④セキュリティ面の強化

機密情報や個人情報が記載された重要書類を、社員が持ち運びしなくてよくなるため、セキュリティ面の強化を図れます。
電子化した書類は電子データとして保管されるため、書類をカフェや駅へ忘れてしまう、落としてしまう、盗難に遭うといったリスクを下げられるのです。

外部からコンピューターへ進入され、データの破壊や盗難が発生するリスクはありますが、適切な対処をしていれば心配はありません

⑤データ保護ができる

電子データとして保管している書類は、物理的な書類として存在しないため、安全な環境で保護できます。
たとえば、オフィスで火災が発生した場合、紙の書類ならすべて焼失してしまう可能性も否めません。
電子化した書類をクラウド保存していれば、こうした事態も回避できます。
一度消失してしまった書類を復元するのは困難ですが、電子化した書類ならそのような心配もありません。

ペーパーレス化のデメリット

たくさんのメリットがある書類のペーパーレス化ですが、デメリットがあるのも事実です。
資料の全体像がわかりにくい、システム障害やネット環境に影響されることがある、導入コストがかかる、などが代表的なデメリットです。

資料の全体像がわかりにくい

電子化してWebで保存するため、資料の全体像を把握しにくいデメリットがあります。
書類をファイリングして保存しているケースなら、どこに何の書類があるのか何となく把握できますが、ペーパーレス化したばかりのときは把握しにくいのです。

ただ、これはきちんと対処すれば問題を解決できます。
電子化したデータをわかりやすく整理整頓して保管し、検索しやすい状態にしておけば問題ありません。

システム障害やネット環境に影響される可能性がある

オフラインで使用するときはあまり関係ありませんが、オンラインでの使用時にはシステム障害やネット環境に影響を受けるおそれがあります。
障害が発生すると、書類を閲覧できない、メールに添付して送信できない、といった事態にも発展します。
書類のペーパーレスに限らず、インターネットを利用しているのなら障害やネット環境に影響を受けるのはある程度仕方がありません。

導入コストが掛かる

紙の書類をスキャンして電子化するのなら、スキャナーや複合機が必要です。
自社で行わず、専門業者へ依頼するのなら、その費用も発生します。

また、パソコンやタブレット端末などのデバイスを各社員に配布しなければなりません。
サーバーのセキュリティ対策も必要であるため、ある程度の導入コストは覚悟しなければならないのが現実です。

ペーパーレス化の手順

書類

ペーパーレス化を進めようと考えてはいるものの、具体的にどうやって進めればよいのかわからない方も少なくないでしょう。
ペーパーレス化を進めるには、正しい手順を知る必要があります。
詳しく見ていきましょう。

①書類の選別を行う

いきなりすべての書類を電子化するのはおすすめできません。
非常に大きな時間と手間、費用がかかるからです。
まずは、電子化する書類を選別することから始めましょう。

頻繁に必要となる重要度の高い書類や、スピーディに検索したい文書を中心に選別することをおすすめします。
不要な書類や保存が義務付けられていない文書は、あらかじめ処分しておきましょう。

②管理方法を決める

書類の電子化に成功しても、管理方法が確立されていないと適切に運用できません。
そのため、電子文書の管理に関する基本的なルールを定めましょう。

決めるべき事柄はいくつもありますが、データの保存形式やスキャナ保存の方法、データの解像度などを決めます。
管理に関する基本的なルールを定めたら、マニュアル化することも忘れないでください。

③書類をスキャンし電子化する

既存の書類を電子化する場合、複合機やスキャナーなどを使ってスキャンします。
自社で行う方法と、外部へ委託する方法がありますが、それぞれにメリットとデメリットがあるため注意が必要です。

自社で行う場合

自社で行うのなら、複合機やスキャナーなどが必要です。
電子化する書類を選別し、1枚ずつスキャンして電子保存しましょう。

自社での電子化は、コストを最小限に抑えられることが大きなメリットです。
電子化する書類が少量なら、自社で行うのもひとつの手です。
ただ、電子化する書類が大量となると、相当なマンパワーが必要となるため、本来の業務に影響が出てしまうかもしれません。

外部に委託(アウトソーシング)する場合

書類のスキャンから電子化まで、一貫して対応してくれる専門業者もいます。
まずは業者を選別し、見積もりをとりましょう。
トータルでの費用はもちろんですが、どこまで対応してくれるのか、アフターフォローの内容はどうなのか、といった部分も確認してください。

メリットは、スピーディかつ確実な電子化が可能なことです。
業者によっては、OCR化やファイル名付けまで一貫して行ってくれるところもあります。
デメリットは、自社で行う場合に比べると費用が高くつくことです。
複数社で見積もりをとり、価格やサービス内容を比較しながら選ぶことをおすすめします。

ペーパーレス化の事例

打ち合わせ

すでに、多くの企業が書類のペーパーレス化に成功しています。
これからペーパーレス化を目指すのなら、すでに成功している企業の事例を知ることで参考にできるでしょう。
以下、書類のペーパーレス化に成功している企業の事例をご紹介します。

アサヒグループホールディングス株式会社

紙の書類と同じように使用でき、なおかつどこからでも安全に利用できることから導入に踏み切ったとのことです。
また、それまでの課題であった省資源化や会議の活性化、事務局負荷の軽減を図るため、導入を決定しました。

導入後は、同社の目論見通り紙や出張にかかる旅費の削減が実現したそうです。
会議運用負荷も軽減し、資料が見やすくなったことから会議への集中度も高まったとのことです。

野村證券

環境保護のため、ペーパーレス化へ取り組んだのが野村證券です。
同社では、限りある資源を有効に使用し、環境への負荷を軽減するためペーパーレス化を推進してきました。
顧客へ送る書面の電子化にも成功しており、約300万近い口座の顧客から電子化への了承をいただけたとのことです。

営業担当者にはタブレット端末を配布し、紙の使用量削減に成功しました。
また、2019年には欧州拠点におけるコピー用紙の使用量を、前年度比28.6%も削減しています。

長野県長野市

近年では、積極的にペーパーレスへ取り組もうとする自治体が増えています。
長野県長野市もそのひとつで、会議のたびに大量の資料を用意する手間や、コストを削減したいとの思いからペーパーレス化に踏み切りました。

現在では、紙の資料を使わないペーパーレスでの会議システムを確立しています。
併せて、文書管理システムの導入や職員の意識改革も積極的に行いました。
今後は、非参集型のWeb会議や市議会におけるペーパーレス議会などにも取り組みたいとい考えているようです。

まずは部分的にペーパーレス化を始めてみては?

いきなりすべての書類を電子化しようとするのは現実的とはいえません。
社員の混乱を招いてしまい、本来の業務に支障をきたすおそれもあります。

まずは、ひとつの部署で試験的に導入し、様子を見ながら規模を拡大させてみてはいかがでしょうか。
スモールスタートすれば、万が一失敗したときもダメージを最小限に抑えられるでしょう。